19/02/15 『あの素晴らしい愛をもう一度』

あれは中学2年の合唱コンクール。
我が2年4組は優勝を目指して朝夕猛特訓していた。
私はピアノ担当。嫌々だったけど、嬉しいことがひとつだけあった。
それは音痴の内藤くんをマンツーマンで居残り指導することになったこと。
そう、ひょうきんでクラスの人気者だった内藤くんに私は想いを寄せていた。

放課後の音楽室。2人きりの練習。
今思えば話す時間はたくさんあったのに、
色々話し掛けてくれる内藤くんに、
照れくさい私はとうとう気の利いた言葉ひとつ返すことができなかった。

「井上さんは無口なんだな」
そんな彼の言葉に少し傷ついたりもしたけど、
話してつまらない女の子だと思われるのが怖くて、
私は最後まで口をぎゅっと閉じたままうつむいていた。

気がついたら合唱コンクールはあっと言う間に終わっていた。
もう何位だったのかも憶えていないけれど、
今も忘れられないのは、
数日後、音楽室でひとり想い出のピアノの前に座ったこと。
内藤くんと何度も練習した、
「あの素晴らしい愛をもう一度」を弾き始めたら、
鍵盤に涙がぽたぽた落ちて止まらなくなった。

神奈川県相模原市 美紀 44歳


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