19/02/15 「楓」スピッツ

「どんな写真が撮りたいの?」と訊かれて、
「誰も傷つけない写真が撮りたいです」と答えたあたしに、
「誰も傷つけない表現なんてないって昔の偉い人も言ってたよ。
 役所にでも勤める気かよ?」と言って笑ったのが、
写真学校でひとつ年上だったK先輩です。

第一印象は最悪だったのに、
コンタックスを手に「今日の光は最高だなぁ」と目を細めるその笑顔が
いつの間にか好きになっていました。
光をたっぷり取り込んだあなたの写真が好きでした。
この人は太陽に愛されている、そう思っていました。
こういうのが誰も傷つけない写真なのかもしれないと密かに思っていました。

写真展の帰りに、スペイン坂から渋谷駅まで、
一度だけ手を繋いだことは今でも大切な想い出です。

初めて触れたごつごつした手の感触も、
緊張して噴き出した自分の手の汗が気になって仕方なかったことも、
夕焼けが本当にキレイだったことも、
それから、あなたを乗せた電車の扉が閉まる最後の一瞬まで、
「好きなんです」と言えなかったことも。

「試し撮りさせて下さい」と嘘をついて何度も撮ったK先輩の写真が、
今もあたしを傷つけます。

東京都渋谷区 モエ 34歳


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